2019年5月6日月曜日

「新たな入試制度案」に現場からのパブコメを!


            「新たな入試制度案」に現場からのパブコメを!

 県教委は3月末に「新たな高校入試制度案」を決め、現中1の学年から導する方針を明らかにしました。しかし、新制度は現場の意見をまったく反映しておらず、問題だらけです。
■きわめて拙速な「見切り発車」
 新しい入試では「高校ごとの独自の検査」や「後期選抜での複数基準」が導入されます。入試制度が一気に複雑化し、混乱は避けられません。それなのに県教委は「2019年夏に決定」「2022年度入試から導入」というスケジュールを早々に決めてしまいました。これは「見切り発車をしないこと、時間をかけて制度的な課題をクリアしていくこと」を県に求めた入試制度検討委員会の最終報告(2018年3月)の主旨にも反しています。

■受検者の気持ちやニーズを無視
 今は前期・後期の「すみ分け」がある程度できており、後期にしぼって受検する生徒もたくさんいます。しかし、前期に学力検査を持ち込めば前・後の「ちがい」が見えにくくなり、ほとんどの生徒は両方に志願して早めに合格したいと考えるでしょう。受検者が増えれば不合格者も増えるのが当然ですが、新制度では前期から後期までの期間が1週間ほど短い設定です。不合格の生徒に丁寧なケアを行う時間が確保できなくなるリスクもあります。
 また、前・後が似たものになれば、前期不合格の生徒が後期で同じ高校に再チャレンジしづらくなることが考えられます。「後期でも落とされたらどうしよう」と不安になって、子どもたちが第一志望を諦めることにもなりかねません。
 後期選抜に「B基準(傾斜配点)」を導入することも疑問です。得意教科の配点が少し高いからと言って、後がない後期でリスクのある高校に志願できるでしょうか? 受検者の心理やニーズとかみ合わない制度では意味がありません。

■中学校の進路指導がパンクする
  どの中学校でも志願理由書の作成指導や面接練習を行っていますが、なかなか指導時間が確保できないのが現状です。面接受検者が増えることで、一人一人に十分な事前指導をすることはますます難しくなります。それに加えて学校ごとに異なる「その他の検査」が導入されれば、現場はもうお手上げです。小論文、プレゼンテーション、グループ討議‥‥いったい誰が、いつそれを指導するのでしょうか?

■本当にフェアな入試なの?
 中学校での十分な指導が期待できないとなれば、不安になって塾などの受験産業に頼る家庭も増えるでしょう。また新制度では「さまざまな学びや活動の成果を評価する」としていますが、これは検定や習い事、体験的活動の実績がある生徒が有利になるということです。いずれもお金がかかり、すべての生徒が機会に恵まれているわけではありません。公立高校の入試が「普通の中学校の学び」では対応できないものになり、家庭の経済的な状況に左右されるのは「フェアな入試」と言えません。

■当事者の声を聞いて「子どものための入試制度」を
  このままでは、現中1や現小6の学年は情報不足のまま競争を強いられ、教科学習以外のさまざまな対策を求められます。それは子どもたちにとって大きなストレスです。自分の“強み”はまだ見えていないけれど、高校でじっくり将来を考えたいという中学生も多くいます。早期に夢や目標を持つこと、自らをコース分けすることを強いるのは、本当に「子どものための入試制度」と言えるでしょうか。県教委は受検者・保護者・教職員の声に耳を傾け、制度の見直しをするべきです。

パブリックコメント期間は5月17日(金)までです。多くの声を県教委に届けましょう。

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